先天性心疾患情報ポータル
〜みんなで学ぶ・こころを寄せる〜開設に寄せて
みなさんこんにちは。
このたび私たちは、厚生労働省難治性疾患克服研究事業科学研究費の支援を得て、先天性心疾患をはじめとする小児期発症の心血管疾患の患者さんやご両親の方々へ、様々な情報をわかりやすく発信する複数のシステムを立ち上げることとなりました。小児期から成人期まで、患者さんが生涯にわたって快活で有意義な社会生活を営むことができるよう、患者さん、ご家族、医師、看護師、医療スタッフ、行政、そして患者団体の方々が力を合わせ、みんなで情報を共有し合い、医学的だけでなく社会的な面からもみなさんを支援して自立をお手伝いしたいと思っています。パンフレットの発行やホームページの作成のほか、お互い情報のやりとりができるスマートフォンアプリケーションの開発なども考えています。
少し難しい話になりますが、これまでの本研究班の歩みをご紹介いたします。私たちの研究班は、先天性心疾患患者さんの移行医療と成人後の診療体制が大きな問題となることが予想された2009年に、この問題を厚生労働省に提言し、活動を開始しました。成人先天性心疾患学会理事長である丹羽公一郎先生の指導のもと、成人患者さんの診療体制に関する各種調査を実施して厚生労働省に報告し、微力ながら様々な政策医療に貢献してまいりました。また2011年には、八尾厚史先生を中心とした全国の主要循環器内科による成人先天性心疾患対策委員会(ACHDネットワーク)の立ち上げを後援し、先天性心疾患はもはや小児科だけの問題ではないことを全国の循環器内科医に大きくアピールして参りました。その結果は、今年から開始される成人先天性心疾患専門医制度と全国の修練施設の認定につながりました。
2018年から本研究班は第4期目に入り、組織が大きく再編されたこともあり、1.地域の医療状況に応じた移行医療の診療モデルを提言する、2.各病院内での移行医療の院内体制づくりを啓発する、3.カルテや検査結果など医療情報を共有できるシステムを立ち上げる、4.患者さんへの適切な医療情報及び社会福祉支援情報を提供する、5.医療関係者と患者さんとの双方向な情報共有システムを作成する、などを提案しています。もちろんこれらの課題は2年や3年で一気に実現、解決できるわけではありません。患者さんの個人情報の保護や、病院や学会倫理委員会の承諾など、確実に乗り越えないといけない課題が数々ありますが、みなさんとともに少しずつ前進できればと考えています。
どうぞよろしくお願いいたします。
2019年3月
厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業「先天性心疾患を主体とする小児期発症の心血管難治性疾患の生涯にわたるQOL改善のための診療体制の構築と医療水準の向上に向けた総合的研究」研究班代表
国立循環器病研究センター教育推進部・小児循環器部
白石 公 Isao Shiraishi